柿渋屋の娘として育った私にとって、柿渋の発酵香は幼い頃から身近で親しみ深いものでした。「この香りを吸うのはからだにとてもいいからね」と祖父が常々言っていたことを、よく覚えています。青くて渋くて固い、あの渋柿の実から搾りとられた果汁が、発酵し始める時に漂わせるワインのような香りは、いつも私を感動させます。柿渋はこの日本の気候・風土と、人々の叡智に育まれた、かけがえのない宝物。その魅力をひとりでも多くの方に知っていただくことが、私の願いです。利便性や経済効率ばかりに目を奪われてきたこの社会の中でも、ふと立ち止まって暮らしの原点を見つめ、自然とともに生きる心地よさを取り戻そうとしている方々は多くいらっしゃいます。今では海外からも柿渋を入手したいというお声が寄せられるようになりました。そんな方々の信頼に応えるため、そして柿渋という文化を次世代に伝えていくため、トミヤマはこれからもごまかしのない本物の柿渋をお届けしてまいります。

トミヤマ5代目代表冨山敬代